<1>子どもソーシャルスタイル診断の効用

論語における孔子の教育方法

「論語」にはこんなエピソードが載っています。

ある時、孔子は弟子2人から同じ質問を受けましたが、それぞれに異なる答えをしました。 その場面を見ていた別の弟子が「どうして答えが違うのか?」と尋ねると、孔子はこう説明します。 「それぞれの性格に合わせて答え方を変えたのだ」と。

具体的には、一方の弟子には少し抑えるべき点があったため、控えめな方向で導き、もう一方には積極性が足りなかったため、背中を押すように答えたのです。 この話からわかるのは、子ども一人ひとりの性格や状況に応じて対応を変えることの大切さです。「教育者はこうあるべき」という考えを端的に表したエピソードとも言えますね。 「論語」に描かれている「個性に応じて導く」考え方は、現代の教育にも通じるものがあります。 当社では、こうした個性やタイプ別の指導法を重視し、お子さんに最適な学習方法を追求しています。

ソーシャルスタイル診断との出会い

そんな中で出会ったのが、ユングの『タイプ論』をベースにしたアメリカの心理学者たちによる「ソーシャルスタイル」という方法論です。 この方法論は、1868年に産業心理学の観点からDaviD W. MerrillとRoger H. ReiDによって確立され、人の社会的な行動を4つのスタイルに分類しています。 これにより個人のコミュニケーション傾向を把握し、円滑な人間関係の構築を目指すことができるとされます。 もちろん、人は状況や相手次第で態度を変えることも多いですが、ソーシャルスタイルの考え方では、そんな一見ばらつきのある行動にも実は一定の偏りがあるとします。さらに、この偏りは幼少期に形作られ、一度定まるとそのまま大きな変化なく成長していくことが多いのだそうです。

外側の情報による診断方法

ソーシャルスタイル診断の特徴として強調したいのは、これはあくまで「社会的行動の傾向」を分析するものであるということ。複雑な内面を掘り下げるのではなく、対外的にどのような言動を取るかに注目し、外に現れた行動スタイルを知ることで、円滑な対人関係に役立てようという考え方です。 たとえば、自分のスタイルそのものは変えなくても、苦手なスタイルを意識的に取り入れたり、相手のスタイルに歩み寄ることで、社会の中での対人スキルを向上させられるのです。 この診断方法は、企業の営業シーンで多く活用されています。営業マンは、自社の商品やサービスを相手にしっかりアピールし、購入に繋げることが求められます。アプローチを誤れば、本来なら成立するはずの契約も台無しになるかもしれません。ソーシャルスタイル診断は、相手に応じたアプローチ法を見極めるために、営業戦略としても使われています。

子どもの学習指導法として応用!

この、もともとは社会の中での人間関係を円滑にするための方法論を、「子ども向けの学習指導法」に応用できないかと考えました。 もしソーシャルスタイル診断が子どもにも適用できるものとして再構築されれば、子どもの社会的行動傾向を把握し、その傾向に応じた成長支援が可能になると考えました。
これこそが、「子ども向けソーシャルスタイル」を開発する動機となったのです。

子ども用ソーシャルスタイル診断の利点とは?

大人と比べて、子どもはまだ社会的存在としての経験が少なく、社会の中での行動スタイルが確立されていない面があります。そこで、発達段階にある子どもにどの程度ソーシャルスタイルが応用できるかが開発の課題となりました。 ただ、行動スタイルの基礎は幼児期に形成されるとされているため、小学生にも十分応用できると考えました。子どもたちは学校や友だちとの関係、地域や公共の場でのかかわりを通じて社会のルールやマナーを学び、成長しています。家庭内でのわがままが通用しないことも理解し始めるこの時期に、社会的行動スタイルを把握し、足りない点を補う形でのしつけを行うことが、今後の成長に役立つと考えられます。 また、学習面でも、子どもの現時点での傾向に合わせた声かけや働きかけを通して、学習意欲を引き出すサポートができることがわかりました。

子ども用ソーシャルスタイル診断の特長

小学生くらいになると、家庭での行動と外での行動に違いが出てくるのが自然です。そのため、子どもが家庭というリラックスした場でどう行動するかと、学校や塾などの社会的な場でどんな態度を見せるかを分けて診断することにしました。これにより、子どもを多角的に理解し、精度の高いタイプ判定が可能になり、個々のタイプに合わせた丁寧な対応ができるようになります。 また、診断の質問内容も、短時間での診断が可能です。お子さんの成長や対人スキルに応じた指導を検討するうえで、効率よく使えるツールです。

保護者のタイプもあわせて把握!

ぜひ、保護者の方もご自身のソーシャルスタイルを診断してみてください。ご自身のスタイルを知ることで、どのように対応すればお子さんがより良い影響を受けられるかもわかります。 たとえば、お子さんが勉強に積極的でない、親の言うことを聞きにくい、積極性がないなどの悩みをお持ちの際には、子ども用ソーシャルスタイル診断と、タイプ別指導法がサポートしてくれます。 この診断が、子育てのさまざまな場面で有益なヒントを提供し、親子のコミュニケーションを円滑にするきっかけとなることでしょう。